やわらかな丸みに、灰の景色がひそむ灰釉の湯呑み

石井菜摘さんの「灰釉丸湯呑み」は、自然の灰を原料とした灰釉（はいゆう）が生み出す、落ち着いた色合いと穏やかな艶が魅力の作品です。
釉薬が土の上で自然に流れ、ところどころに溜まりや濃淡をつくることで、まるで霧のようにやわらかな景色が広がります。

丸みを帯びたフォルムは手に心地よく収まり、掌にのせるとしっとりと温もりが伝わってきます。口縁はほどよく薄く仕上げられ、口当たりもやさしく、日々のお茶の時間を穏やかに整えてくれます。

灰釉特有の深みと透明感、そして石井さんのやさしい造形が織りなす一品。
使うほどに釉の艶が増し、色の表情が育っていく――
“日常の中で静かに変化する美しさ”を楽しめる湯呑みです。

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石井菜摘さんのプロフィール

京都市内にて作陶。「いしいもけ」の名前でも活動し、粉引の器を中心に、気取らない日常づかいのうつわを制作しています。白いうわぐすりの下から土の色がほのかに透ける粉引は、素朴でやさしい表情が魅力。シンプルな形ながら、縁のラインや高台のバランスに遊び心があり、何を盛っても不思議とさまになる器です。また、絵付師・川邑藍子さんとのコラボレーションでは、古美術の世界を思わせる絵柄が加わり、物語性のあるうつわに。京都という土地の空気感をまとった、やわらかく親しみのある作品世界が広がっています。